配偶者の死は衝撃的な出来事であり、多くの人は悲嘆の辛さを経験する。大切な人の死の悲嘆については、死別からの経過期間がその緩和に効果的であると信じられてきたが(「日にち薬」と言われている)、その真偽を明らかにすることを本研究の目的の一つとした。 昨年度、配偶者と死別後平均7.8ヶ月経過した中高年の男女276名(平均年齢72.3歳)に面接調査を実施し、配偶者と死別した中高年者の死別による衝撃の大きさと心理的な問題を明らかにした。本年度は前記の調査から約1年半後に追跡調査を行い、その後の適応状況について検討した。追跡調査は2002年の1、2月に訪問面接により実施し、192名(男性82、女性110)の対象者の協力を得た。 1年半隔てた2回の調査の結果から、以下のような結果を得た。 1)追跡調査で、対象者に現在の心理状況を尋ねた。死別の悲しみから「すっかり立ち直った」「かなり立ち直った」とするものが71%であった。悲しみから立ち直るために効果があった事柄についての回答では、「家族や友人の支え」r時間の経過」などの回答が過半数を占めた。 2)初回調査と追跡調査の結果について、反復測定の分散分析を用いて分析を行った。追跡調査では初回調査より「悲しみ」「さびしさ」などの死別と関係の深い感情を感じる頻度は有意に減少していたが、精神的健康、心身症状など、健康や適応の状況を測定する尺度については変化は認められなかった。 以上のことから、配偶者の死後2年が経過すると、悲嘆を経験することは少なくなるが、精神的健康や適応状況の面でぱほとんど改善が認められないことが判明した。
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