1.フランクフルト学派の著作、および、フランクフルト学派に関する国内外の研究文献で、現在、入手可能なものを調査し、収集を開始した。 2.ヴァルター・ベンヤミンの『写真小史』に登場する、アジェーを中心とする写真家たちの文献資料を収集し、フランクフルト学派の第一世代が主な対象とした映像芸術の傾向を明らかにした。 3.銀塩写真の技法を習得することにより、写真を「撮る」のみならず、「作る」ということのじっさいのプロセスに触れることが可能となった。 4.20世紀の写真論として、ソンタグ、ボードリヤール、ブルデュー、笠原美智子、多木浩二といった人びとの文献を中心に読み、主として「撮る」という行為をめぐっての議論を追跡した。 5.上記の3と4によって得られた成果をベースにして、『記憶へのオマージュ-「撮る側」のレトリック-』の表題のもとに、2000年3月末日締め切りの論文を学会誌に投稿する準備を進めている。 6.来年度からは、コンピューターによる画像処理を中心に、新しい映像技術の意味を探るとともに、フランクフルト学派自体の研究に関しては、研究の目的に沿って、以下の3点を重点的に追求する。 (1)アドルノの美学理論に関する諸論考の研究。 (2)1930-40年代の、ナチズムの時代のドイツの社会状況の研究。 (3)アドルノと彼の研究グループによる『権威主義的パーソナリティー』をめぐる、いわゆる「ファシスト的人格」の諸形態の研究。
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