1.アドルノ/ホルクハイマーの「近代批判」との関連で、現代の「第三世界論」を検討し、その成果の一つとして、『唯物論』第74号(2001年12月、東京唯物論研究会)に、「新自由主義による『貧民殲滅作戦計画』」と題して、スーザン・ジョージ『ルガノ秘密報告 グローバル市場経済生き残り戦略』(朝日新聞社、2000年)についての書評を発表する。 2.2001年4月から5月にかけて、ベルリン・フンボルト大学哲学部第二部門を訪問し、フランクフルト学派研究の現状等について、研究打ち合わせを行い、フランクフルト学派の思想史的研究もさることながら、フランクフルト学派の問題設定を、現代においてどうとらえるか、ということの重要性を、改めて確認する。 3.フランクフルト学派第一世代の芸術社会学との関連で、世紀末から20世紀初頭にかけてのドイツ語圏(とりわけオーストリア)の芸術作品の研究の一端として、ロバート・ムシル、アルトゥール・シュニッツラーといった作家たちの作品を読み、ベルリンではムシルの『熱狂者たち』、東京ではシュニッツラー原作の『ブルー・ルーム』を観て、彼らの作品の現代的意義を考える素材とする。 4.アドルノの『文学への評注』の対象となった諸作品との関連で、ゲーテ、レッシング、ストリンドベルイ、ギリシャ悲劇、シェイクスピアといった劇作家たちのいくつかの戯曲を再読する。 5.芸術社会学の主要なテーマの一つは、社会における芸術・文化の位置の探求であるが、現在のベルリンにおける音楽や演劇の状況は、この関連においても、きわめて示唆に富む素材を示しており、引き続き、検討の対象とし、文学の分野の雑誌に依頼された論稿を執筆することにしている。 6.以上の経過を受けて、来年度は、『啓蒙の弁証法』で展開された、「近代批判」・「文化産業論」との関連で、論文を執筆する予定である。
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