1.アドルノの理論的著作の研究では、『否定の弁証法』と『啓蒙の弁証法』を中心に、本年(2003年)の秋をめどに論文を執筆する予定で、準備を進めている。 2.フランクフルト学派「文化産業論」については、2度、ドイツに赴き、研究者たちとの間での研究打ち合わせを続行し、とりわけ、いわゆる「ハイカルチャー」と「サブカルチャー」との間の領域的な差異について、討論を行う。 3.2の論点との関連で、現在のドイツの文化状況(とくに、演劇と音楽)を、いくつかの都市に赴いて調査する。たんなる「公共の建物」というにとどまらない、「劇場」-言うなれば、「制度としての劇場」-とでも呼ぶべきものを基盤とする芸術活動の実態の、日本の文化状況とのきわめて大きな差異に、改めて注目する。そうした差異の所以の解明ということでは、ドイツ(ドイツ語圏)の文化の歴史的な展開についての実証的な研究も必要となることは明らかである。 4.個々の劇場の俳優や文芸部員といった人びとに対する聞き取り調査(インタヴュー)も行い、現代ドイツの演劇事情について、いくつかの資料を収集する(ただし、まだ研究の端緒に就いたばかりである)。 5.ベルリン、マンハイム、フライブルクといった、ドイツの大小さまざまな都市で展開される「劇場」の芸術活動については、5月末締め切りの論文を、雑誌『葦牙』から依頼されており、現在、そのための準備を進めている。 6.写真論については、現在のデジタルカメラにいたる、この1世紀のカメラ技術の歴史について、いくつかの文献を収集する。
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