1.ヴァルター・ベンヤミンの写真論を契機とする、20世紀における写真についてのさまざまな論考を対象として、主として写真を撮る側の意識の問題を明らかにするために、『記憶へのオマージュ-「撮る側」のレトリック-』(2000年)を発表する。 2.写真の技術とその歴史についても、文献資料の収集を行う。 3.フランクフルト学派においては、理論的研究と実証的な調査研究とは、相互に不可分のものとなっている。アドルノの「文化産業」論の問題設定についても、社会調査的な研究の必要性が明らかなことから、現代ドイツの文化伏況、とりわけ、演劇を中心とした劇場の状況について調査活動を行い、『ベルリン-文化伏況断章』(2002年)、『反戦を掲げる劇場-現代ドイツの文化状況II-』(2003年)を発表する。 4.「芸術と文化産業」というテーマをめぐっては、現代ドイツの演劇状況についての調査研究を続けるとともに、それと並行して、ドイツにおける「制度としての劇場」の成立のプロセスについての、歴史的・理論的研究を行うことにしている。 5.理論的分野におけるアドルノの2つの主著-すなわち、美学の分野における『美学理論』、哲学の分野における『否定的弁証法』-については、さらに研究を続行する。 6.上の4と5を実現することによって、文化の領域を主要な対象として「近代化』の問題を明らかにすることが、今後の課題である。
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