昨年度の調査から、民間のテーマパーク型の博物館の増加と並行して、公立の博物館においても、運営が教育委員会から知事部局へ、さらに第3セクターへ移行し、展示内容も教育志向から観光志向へ、地域志向から「脱場所化」志向へと変化していく傾向が浮かび上がってきた。今年度は、観光のまなざしによる博物館の変容が、博物館の内部空間の変容にとどまらず、博物館を含む地域空間全体に及んでいることに注目して、この「空間の博物館化」という現象に焦点を当てて、調査を行なった。調査対象は、茨城県つくば市筑波山神社周辺地区、東京都葛飾区柴又地区、京都市内4か所の重要伝統的建造物群保存地区の3か所とした。また国際比較のため、フランス・パリ市内における歴史的町並保存の実態についても調査を行なった。 調査の結果、以下の点が明らかになった。 (1)いずれの地区においても、地域における伝統を構成する要素のうちから、観光のまなざしの対象となる要素が選択され(「ガマの油」、「寅さん」、「舞妓」)、この要素を核として、博物館の展示が構成され、また地域空間全体が変容していくこと。 (2)この要素は、観光のまなざしによって「発見」されたものである場合もあるし(「舞妓」)、「借用」されたり(「ガマの油」)、「捏造」されたり(「寅さん」)したものである場合もあること。
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