本年度はまず、農村社会学関係の研究書、研究論文、及び官庁統計等を収集し、農村家族・農村女性・農業後継者に関して概観した。農業後継者の多様な存在様態について考察するとともに、農村女性の役割と地位が農村社会の「家」の変容を把握する際には重要な鍵を握る点を考察した。 こうした理論的考察及び全国レベルの統計資料の検討をふまえて、予備的調査として新潟県農林水産部、宮城県産業経済部で聴き取りと資料収集を行い、それぞれの県での農業後継者や農村女性の状況や活動事例などの紹介をうけた。そのうえで、今年度は主として以下の3ケ所で対象者への聴き取り及び資料収集を行った。 1.新潟県柿崎町。柿崎町農業構造改善センターで町レベルの資料収集を行い、農業後継者集団「いぶきの会」および農村女性の集団である「ポプラの会」の現況について聴き取りを行った。また、集落ぐるみで生産組合を形成している「岩手ファーム21」について組合長から聴き取りを行った。 2.高知県窪川町。町の中心的な農業の担い手でもある窪川町議から聴き取りを行った。有機農法を軸とした農業の活性化と後継者間題を中心に話を聞いた。 3.宮城県田尻町。集落の女性6名で経営している農産物販売店「米・ろ一ど」について、代表の女性から聴き取りを行った。店舗を核として、農村女性のネットワークが広がりつつあるという印象を受けた。 本年度は、いずれの対象地においても予備的調査の段階であるので、次年度以降本格的に現地調査を続行するとともに、理論的考察も深めてゆきたい。
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