主要間題を「介護される場所」の希望とサポート・ネットワーク(SNと略称する)との関連にしぼった。2000年10月金沢市において面接訪問調査を行なった。調査対象者は無作為抽出した20歳以上65歳未満の男女432名。有効回答数は263、有効回収率は60.9%高齢時に介護される必要が生じた時にどういう場所で介護されたいか、という質問に対する回答を被説明変数とした。回答の選択肢は、「在宅介護」「(老人向けサービスの整った)民間マンション」「公的な老人ホーム」であり、回答者にはどれか一つのみの選択を求めた。この選択がどのようなSNによって規定されているのか、これが主要問題である。 1 自分の介護の必要時、配偶者がそばにいると予想する人ほど「在宅介護」希望が多かった。 2 男性の場合、子供による介護・世話を期待できる人ほど、「在宅介護」希望が多いという弱い関連が認められた。 3 日常生活におけるSNの大小は、「在宅介護」希望かそれ以外の希望かに影響しない。 4 「在宅介護」の希望の有無を規定する要因は、友人・隣人たちとのSNの大小ではなく、1親等程度のごく近い親族による介護を受けられるかどうかという見込みである。 5 中高年世代の28.0%が「公的老人ホーム」を希望しているが、より若い世代の「公的老人ホーム」希望は13.8%と少ない。より若い世代は個室(キッチン・トイレ・シャワー付)のある生活を望んでおり、現行のような「公的老人ホーム」には期待しないからではなかろうか。さらに、より若い世代は公的年金制度に不信感をもっているといわれる。一般的に考えると、高齢者福祉に関する公的制度に対する不信感が、彼らには潜在的に大きいのではないか。彼らがもっているこの不信感に適切に対応することが、今後の政策的課題の一つになるだろう。
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