これまでの研究を総括して、統合理論を提示する段階に達した。その理論の主な知見は以下のことである。 1.逸脱のコントロールの捉え方(理論的視点)。統合のための準拠点として「社会的世界論」を提示。「社会的世界論」は制度と相互作用を社会生活の基本的な要素とみなし、社会生活の組織化と変動を過程的に把握する視点である。 2.逸脱とは何か(逸脱の定義)。社会的世界論の視点からは、逸脱は制度化された意味世界に違反する行為であり、特定の状況で相互作用を通じて特定の逸脱のカテゴリーが付与されることで逸脱行為・逸脱者が構成される。 3.コントロールの形式は専門的コントロール・共同体コントロール・組織体(官僚制的・同僚的)コントロール・世論によるコントロール・運動型コントロール・自助コントロールに分けられる。これらの遂行の仕方(たとえば裁量)やその結果を左右する社会構造的要因や相互作用や社会関係を特定化した。 4.逸脱化を説明する理論として、「制度の正統性の衰退」「コントロールの弱体化」「逸脱への肯定的な意味の付与」の3要因の連関モデルを示し、企業逸脱のケースに適用して、その有効性を検討。そして「企業逸脱は取得されえる他者の態度が狭い範囲でなされる合理的な選択であり、その背後には逸脱者を経済制度の犠牲者と見る意識があり、そうした風土で企業に対するコントロールの連携を欠く場合には、企業逸脱は容易になる」という、命題を示すことができる。
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