本研究計画の目的は、継承にかかわる資源と文化の規定を明らかにすることである。この目的のために、東南アジアと日本の社会を比較しつつ、手始めに、支配者の系譜に現れた継承の問題を扱うことにした。日本においては、江戸時代以降は長男による継承が原則化し、それが一子による継承として固定してしまうので、それ以前の時代まで遡り、兄弟間での継承ならびに分割に関する原則がまだ流動的な様相を示す時代の様相を探ることにした。このために、日本各地の県立図書館などで収集されている江戸時代以前の地方支配者の系譜ならびに地方史記事を閲覧・複写して、これらを考察の基礎に据える準備を行った。本州中央部には、徳川譜代の大名が多く、系譜が比較的新しい場合が多いので、主として東北地方および中国・九州地方から事例を収集した。他方、東南アジアに関しては、マレーシア・インドネシアにおけるスルタンの系譜などに注目している。来年度は、系譜資料の収集をさらに進めるとともに、仮説の設定に沿って資料の分析を開始する予定である。
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