東南アジアにおいては20世紀初頭にいたるまで、その小人口を背景に土地に対する価値付与が低く、家族レベルにおいては相続に際して、生産の手段である土地の均分が通常であった。また、リーダーシップの領域においても、継承の原則が確立されない場合が多かった。他方、日本においては、かなり早い時期に生じた土地不足等のために、一子による相続が定着していった。リーダーシップの嶺域においては、家族内の年長者、すなわち長男による相続が定式化した。このような対比を念頭において、資源と継承との関係を明らかにすることが本研究の目的である。平成12年度においては、前年度に続いて資料収集を行なった。とくに東南アジアにおける状況に近い継承形態が認められるわが国の中世にさかのぼって、西南および東北の状況に注目しつつ、地方支配者の家系継承に関する資料を集めることを試みた。初年度に収集した資料については、とくに支配者の前支配者に対する関係、支配権に分割の様熊等に注意しながら、支配権あるいは家系代表権の継承の原則と実際に関する整理と分析を開始した。
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