本年度は、学童保育の様々な保育場面について70本ほどのビデオテープに記録し、現在データ整理を継続中である。これらをサーヴェイした結果、以下のような予備的知見を得ている。 1.規則語りにはわずか二つの発話交換によって終了する短いものから、2時間以上に及ぶ長いものまである。長いものの場合、規則語りは組織の日常的活動の大幅な変更を伴う。2.それゆえ指導者は、児童から規範的に適切な反応を引き出すことと、日常的活動を円滑に進めることとの、ディレンマをはらんだ選択に直面する。3.特に、ひとたび開始された規則語りをいかにして終了するかが、指導員にとって実践的に重要な課題となる。規則語りを終了させるために、指導員は組織の日常的活動の諸側面を「その規則に関連したもの」として意味づけ、語りを終了させるための解釈上の資源として動員しようとする。しかし、この解釈上の操作も成功するとは限らない。規則語りにとって本質的困難とも言えるこの「終了」問題がいかに解決されているかが、次年度以降の1つの中心的探求課題となる。4.規則語りは児童と児童のあいだでも行われるが、これらは指導員と児童の規則語りとは異なった展開を見せる。特に、学年の近い児童による「規則違反の指摘」はそもそも「規則違反の指摘」として発効しない。それゆえ、規則語りにおいて、語り手の成員カテゴリーがやりとりの展開を左右する資源として常に参照されていると予想される。児童同士による規則語りは、このような成員カテゴリーの働きを考える上で重要であり、この点に注目して指導員-児童間の規則語りとの比較分析を行うこと、これがもう一つの次年度以降の探求課題である。
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