本研究では、学童保育所の指導員が「注意」や「トラブル仲裁」などの形で子供に向けて規則を語る相互行為(「規則語り」)について、会話分析の視点から分析を行い、以下のことを明らかにした。 1.規則語りは主に、保育時間の構造化、保育場面における空間と身体の構造化、子どものカテゴリー化、実際的イデオロギーという4つの保育状況の構造を参照して行われる。 2.注意という言語行為は、子どもの関与に「突き刺さる」とともに、自分の行動の優先的な描写権が子どもにないものとするという特徴を持つ。注意をめぐる相互行為は「対位法的行為連鎖」と呼びうる特有の形式をとる傾向がある。対位法的な行為連鎖の中で行われる抵抗は注意の「ひもとき」の契機となり、これは他の種類の「ひもとき」の契機に対して優越している。これらの結果として、注意をめぐる相互行為では「動機」が問題にならない形で規則が用いられる。 3.トラブル仲裁においては、子どもはトラブルの相手の行動を「動機的に不適切な」ものとして描写する手続きを用い、指導員は「中立性」を維持するための諸手続を用いようとする。トラブル仲裁の相互行為は「召喚理由の提示と受け入れ」「出来事の特徴づけ」「動機表明」「規則との結びつけ」「謝罪とその受け入れ」という全域的構造を参照する形で展開する。この中で、子どもには動機表明が求められ、動機は規則と結びつけられ、その結びつきへの同意を踏まえて謝罪することが求められる。こうして、トラブル仲裁においては「動機」が問題となり、「規則の動機への組み込み」がひとつの相互行為手続きとして用いられる。
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