本年度は、4年計画の2年目の作業として、これまでに集められた統計データの分析を試みるとともに、地域移動関係の資料収集を行なった。 統計データに関して、まず行なったのは、都道府県データをもとに1955年以降の日本の地域間人口移動の特徴の分析である。そこで行なわれたのは以下の3つの作業にまとめられる。(1)「大都市圏」「地方中枢圏」「地方周辺圏」といった圏域設定。これは、従来、日本国内のマクロな地域移動に関して使われてきた「大都市圏」「非大都市圏」という2分類をより現状適合的に改良しようとしたものである。(2)3つの圏域間の人口移動の歴史的分析。ここでは、高度成長期おける「地方周辺圏」から「大都市圏」に向かう人口の大きさと、それが地域にもたらすインパクトの大きさが明らかにされ、また、現段階での3圏域の人口の社会増あるいは社会減が非常に小さなものになってきていることが議論された。(3)社会学的な「社会移動」研究で用いられるの分析用具を取り入れての人口の地域移動分析。ここでは、高度成長期以後、事実移動は小さくなってきたが、事実移動に占める純粋移動の割合は高いままであることが明らかにされた。以上については、論文「1955年以降の日本の地域間人口移動」にまとめられたが、現在、島根県を対象に、市町村データ等を用いた詳細な分析が試みられている。 本年度はまた、関連行政機関の関係者の意見を参考に、来年度に予定されている意識調査に関わる資料収集が進められた。この意識調査が目的としているのは、「地方居住者の都会に向かう志向性」および「都市居住者の地方に向かう志向性」を明らかにすることであるが、集められた資料は、上記の「島根県内市町村データの分析結果」とともに調査対象の設定に役立てられ、また、実際の調査票の作成に利用される。
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