「社会福祉援助における調査方法(論)の社会学的分析」の研究において社会福祉援助職がどのような目的でどのような調査をおこなっているのか、その調査がその援助活動にどのような影響を与えているのかについての分析を進めてきた。 植田章は、我が国における知的障害者の加齢研究に関しての調査を行った。この研究の中で植田は、この分野の先行研究が主に生理学的検査や日常生活行動のレベルの研究にとどまっており、生活環境や暮し向きの質を含めて加齢の影響を考察していないことを指摘している。そして身体的、精神的な機能の低下と生活環境因子や社会関係因子との関連を明らかにする調査研究が必要であることを指摘している。 石倉康次は介護保険における要介護認定調査の間題点を検討し、要介護認定調査が介護保障のためのシステムではなく、需給統制手段として機能している現状を指摘している。 また研究協力者の石橋潔は、要介護認定一次判定システム構築のための調査研究を取り上げ、その調査研究がどのような介護の捉えなおしを含んでいたのかを考察している。一次判定システム構築の研究において、介護は時間という尺度で計量化された。このような計量化がどのような社会的背景で必要とされ、どのようなジレンマを引き起こしたのかを知識社会学的に考察している。 また研究協力者の岡本晴美は、社会福祉調査という観点から、児童虐待という社会問題に対するアプローチの1つとして民間団体CAP(Child Assault Prevention)の活動の分析を試みている。 以上のような共同研究によって、社会福祉調査が単に調査対象を理解するための科学的方法としてだけあるのではなく、調査結果を通じて福祉実践に多様な局面において多様な影響をあたるものであることを明らかにしている。
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