平成12年度も、前年度に引き続き、近現代日本の災害誌に関する文献・資料を収集・分析したほか、阪神・淡路大震災後の復興過程に関する最新のデータや資料を収集し、地域単位の復興プロセスの進捗状況に関する実態調査を実施した。また、平成12年10月に発生した鳥取県西部地震の被災地において、被災状況、復興過程等に関する資料収集および実態調査を行い、地方小都市や過疎農山村地域における災害対応の特性を把握しようと努めた。後者の災害と阪神・淡路大震災に見られるような大都市災害とを比較することにより、コミュニティの災害対応力や被災後の地域社会変動に関する、より広い視点からの分析が可能になるのではないかという着想を得たところである。 今年度の調査研究から明らかになった知見をいくつかまとめると、以下のようになる。 (1)阪神・淡路大震災の被災地では、各種復興事業も進捗し、街区の再生自体は完了しつつあるが、住民の生活再建や地域社会の再生は必ずしもスムーズに進行していない。特に、地域差・階層差が大きく、震災後に獲得した新たな諸資源を生かしつつコミュニティの再生に取り組んでいる地域と、そうでない地域との「復興格差」がなお拡大している。 (2)鳥取県西部地震で被害を受けた過疎高齢化地域では、被災者の住宅再建を支援する制度を地元自治体が創設し、復興期における人口流出の阻止と地域社会の維持に寄与している。復興(支援)事業のあり方が、被災コミュニティのその後のありよう(変動・再生)を規定することが改めて浮き彫りになったといえる。 なお、平成13年度も、被災地の調査研究をさらに押し進め、知見の整理と一般化を図っていく予定である。
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