本研究は、西日本の政令都市北九州市、福岡市、広島市における福祉二ーズと高齢者処遇と研究を意図するもので、これまでの地方都市(宮崎市)、過疎(山口県東和町)で行ってきた高齢者殊遇の研究(成果は『高齢者ラベリングの社会学』(恒星社厚生閣)2000年2月で出版)の延長線上の研究である。 今回は調査地設定と調査地の概況分析を行った。5市合併によって生まれた北九州市は産業都市である。鉄鋼を中心に栄えたが、重厚長大型の典型的な不況地域になっているため福祉二ーズも高齢者二ーズのウエイトが高い。それに対して福岡市と広島市は福岡市が九州の管理中枢都市、広島市が中国地方の管理中枢都市として発展途上の都市である。北九州市ほどの高齢化率も抱えていないし、高齢者福祉二ーズが高いわけではない。なかでも福岡市の場合、高齢者福祉より国際化や男女共同参加型都市形成の施策の方がウエイトが大きい(実際、福岡市が一番若い人口持っており、以下広島市、北九州市の順となっている)。調査では北九州市が八幡東区(尾倉地区)と小倉南区(企救丘)、福岡市が博多区(博多部)、東区の(名島)、広島市が中区(元町)と佐伯区(五日市)の6地点の小学校区・中学校区を対象に実施する予定である。三つの市のなかでそれぞれ二地域を選出して、そこでの高齢者の置かれた状況を分析することをめざしている。 大都市といえどもインナーエリアの中で生活している高齢者と郊外区の新興地域での高齢者の置かれた状況は相当違った二ーズが現れていることがわかった。大都市は、若い人口を抱え、一方でインナーエリアなどでは深刻な高齢化が進んでいく。今後、聞き取りとアンケート調査を通して老人たち自身が「老い」をどのように捉えているか、他方で、地域社会や施設が老人をどのように処遇しているかを分析するつもりである。
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