本研究は、西日本の政令都市北九州市、福岡市、広島市における福祉ニーズと高齢者処遇の研究を意図するもので、これまで筆者が地方都市(宮崎市)、過疎地(山口県東和町)で行ってきた高齢者殊遇の研究(成果は『高齢者ラベリングの社会学』(恒星社厚生閣)2000年2月で出版)の延長線上の研究にあたる。 今回は、昨年の下準備を受けて、アンケートによる実態調査を実施した。調査地は、広島市では中区、佐伯区、北九州市では小倉南区、八幡東区、福岡市では博多区、東区である。調査にあたっては、三つの市とも中心部と郊外部の地区を選んだ。調査対象者は、65〜79歳までの年齢の高齢者で、具体的には対象者を選挙管理委員会の協力を得て選管名簿から各地区500人、計1500人ほど選び出し、それを郵送法で調査した。回収率は54.5%(回収数845)であった。 調査では、従来から研究してきた老人差別意識を分析するために、敬老精神の有無や「自分が老人になったか」や「老人と呼ばれて気にする」といった一連の老人意識調査項目を調べているし、それを支える主観的な自我意識(自我像調査項目)や客観的な社会構造や社会関係(性別、年齢別などのフェースシート、家族、近隣、友人関係、団体参加やインフォーマルネットワークなど)についても調べている。そして、今回は、制度的な高齢者差別の典型である退職制度についても調べた。つまり、退職後の主観的な処遇間や老人意識についても調べている。その他では、今回は、新たにエイジングと時間感覚の関連についても分析するために時間意識の項目、そして介護やボランティア参加意識なども入れて調査した。 次年度は、今回のこの調査の分析と昨年度調べた地域研究とを結びっけ、『報告書』にまとめることに専念したい。
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