本研究は、西日本の政令指定都市広島市、北九州市、福岡市3市における福祉ニーズと高齢者処遇と研究を意図するもので、これまでの地方都市(宮崎市)、過疎(山口県東和町)で行ってきた高齢者処遇の研究(成果は『高齢者ラベリングの社会学』(恒星社厚生閣)2000年2月で出版)の延長線上の研究である。 調査は地域社会への関心度、社会関係・人間関係、老人線・老人観・老人差別、自我像、時間意識、退職意識、介護・老人ホームへの入居意識など68項目について行った。 この調査で中心的に研究した分析箇所は、他の地域で実施した老人意識類型が大都市でどのような傾向を示すか、大都市の高齢者の退職意識がようになっているか、時間意識とエイジングがどのようになっているか、大都市の「呼び寄せ老人」の分析をしたことにある。今回の場合、都心と郊外の地域構造による分析と住民類型(純粋土着型、土着流動型、居つき層、ステップ層、流動層)から新たな分析も行った。 (1)老人意識類型のうち老人自意識型に社会関係量(団体か加入数)が一番多くみられ、人間関係量(インフォーマル・グループ数)は老人自律型が一番多くみられた。老人自意識型に社会関係量が多くみられるのが大都市高齢者の特徴であった。 (2)退職経験者は、全体の43.2%を占めた。退職意識では、「ゆとりができてよかった」(55.8%)という積極的評価がある反面、「退職制度は、非条理な制度」、「気が遠くなるほど、1日が長い」、「老け方が早くなった」も2割近くみられた。 (3)呼び寄せ老人は、全体では3.4%しかみられなかったが、60歳後に移動した高齢者でみると、約2割近くみられた。土着流動層と流動層、女性より男性に多く、都心より郊外の在住者に多くみられた。
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