本年度は、研究打ち合わせ会の開催、予備調査、および文献資料にもとづく研究枠組みの確定作業を行った。主な内容と成果はつぎのとおりである。 1.松山市、金沢市、宇都宮市などにおいて実施した予備調査結果の検討から、a.本研究テーマについては聞き取り調査を中心とすることが有効であり、b.調査地点について、再度、地域を限定して選定する必要があるとの結論を得た。なお、調査地は松山、福井・金沢、浜松において再選定することとした。 2.分析枠組みについて、内発的発展と地域文化のかかわりでは、民衆意識のレベルにおいて重層的・複合的に存在している価値体系に着目することの必要性が確認できた。さらに、価値体系の特定のものが、特定地域における特定の時代状況のもとで、どのように表出したのかということを捉えてゆくことの必要が認められた。 3.東アジアにおける日本社会の歴史的特殊性についてでは、a.東アジア社会全般において、重層的・複合的な価値体系への着目の必要性は一般的に承認されるべきであることが明らかとなった。b.しかし、こうした価値体系については、日本社会では仏教、儒教・道教のあり方などが中国や韓国とかなり相違していた。そのあり方の相違に日本社会の特殊性が明確に示されていると考えることができた。c.加えて、価値体系のあり方そのものについても、地域的な多様性についての検討が不可欠であることが確認できた。
|