研究概要 |
研究打ち合わせ会の開催,聞き取り本調査を行うとともに,関連資料を収集した。 1.内発的発展については,いくつかのタイプがあること,そのなかでも「地境」という歴史的特性をもつ地域での発展状況が注目に値することが明らかとなった。 2.「地境」という特性を明確にもち,かつ内発的発展といえる状況を顕著に示している松山近郊の伊予市において行った本調査から,つぎのことが明らかとなった。それはa)地境は歴史的に支配の空白としての特質をもちがちであること,b)支配の制約から放置されがちであるがゆえにある種のチャレンジ意識をもつ人間を形成しがちなこと,c)この意識をもつ人間が存在し外部条件が満たされたときに内発的発展がみられること,という三点である。あわせて,発展が一定段階に達したのちには,類似業種間での過当な競争を生みがちであり,また地域での勢力対立の調整に困難をきたしがちとなる可能性も明らかにすることができた。 3.伊予市本調査との関連で,他地域の特質も参照してゆくことが最も妥当であると考え,福井市と福井近郊の武生市,鯖江市において関連資料を収集するとともに,若干の聞き取りを行った。また,日本全体に関する資料を収集し,大分・長崎・平戸でも現地資料を収集した。そのなかから,歴史的にみて,大藩と小藩,外様大名支配地と親藩・譜代大名支配地で状況にかなりの相違があることが明らかになった。 4.日本社会の歴史的特殊性との関連では,その封建制において中心性が希薄であったがゆえに,地境のもつアジール的意味が顕著に現れていることが明らかとなった。
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