2年にわたる本研究の最大の目的は、戦後日本社会における規範の変容と崩壊の実熊を解明することである。そこで研究の初年度である今年度は、日本人の規範意識の現状を把握するために、規範意識のうちの性別規範、年功序列規範、医療をめぐる意識の3つに焦点をあてて、質問紙を用いた意識調査を行なった。これら3つの規範意識のうち、性別規範と年功序列規範は、日本社会の制度を根底で支えている規範であり、医療をめぐる意識は、「脳死」「臓器移植」などの言葉に象徴的に示されているように、医療技術の急激な進展にともない大きな変化を強いられている意識である。 調査は、国家公務員、地方公務員、製造業の民間企業2社、大学病院に従事する人々を対象にして、平成11年11月に調査票を配布して、自記式で実施した。このうち、国家公務員、地方公務員、大学病院については全数調査を行なった。大学病院を対象としたのは、規範意識の1つとして医療をめぐる意識に焦点をあてたからであり、国家公務員、地方公務員、製造業の民間企業2社を対象としたのは、できるだけわが国の代表的な労働領域をとりあげて、その代表的な労働領域における規範意識を明らかにしようとしたからである。回収数は、国家公務員390、地方公務員388、大学病院1212、民間企業2社は、それぞれ436、399(全体で3806票配布して、回収数2825票であり、回収率74.2%)であった。 その後、今年度の作業としては、回収された調査票の点検、デ一タ入力とデータチェック、項目別集計(単純集計)までを行なった。今回収集したデータの詳細な分折は来年度に行なう予定である。具体的には、今回収集した意識調査の分析によって、日本社会における規範の変容を明らかにし、新しい社会秩序の根幹となる規範がいかなるものであるかを考察する予定である。
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