1999年度は、虚弱高齢者がケアを受ける特別養護老人ホーム、老人保健施設の高齢者の生活水準・クオリテイ・オブ・ライフ(QOL )が果たして保たれているかどうかということを捉えるために、高齢者の身体機能、衣食住、医療など生活環境、施設生活の生活満足度等について調査し、施設ケアの再評価を行った。調査はFIM、SF-36および独自に考案したLSQにより、佐賀県内の特別養護老人ホームと老人保健施設居住高齢者200名中、1ヵ月以上の居住者で自立したコミュニケーション力がある高齢者83名を対象とした。 老人保健施設ではFIMとSF-36の身体機能(PF)は強い相関を示し、特別養護老人ホームではFIMとSF-36の身体機能(PF)とはほとんど相関がみられず、FIMとSF-36の体の痛み(BP)とに相関を認めた。特別養護老人ホーム居住者はFIMによる身体機能の評価は低いものの、QOLの尺度であるSF-36のスコアは高く、SF-36のサブスケールにおいて、特別養護老人ホームのスコアが老人保健施設より高かった。特にハイスコアであったおしゃれスコアでは、特別養護老人ホーム居住者は、SF-36との相関を認めた。老人保健施設入所者のSF-36は身体機能(PF)、体の痛み(BP)についてのスコアが高かった。老人保健施設においては、身体機能の回復、緩和を重視したサービスの提供、身体機能の低下に伴う精神的ストレスや社会的役割喪失へのケアがQOLに影響し、特別養護老人ホームにおいては、身体的側面より生活面における自由意志の尊重が自己実現の一部分を形成すること、両施設の機能の差異と居住期間の違いにより生活満足度には差異がみられること、医療サービスの充実度などがQOL向上に関わるということが今回の研究によって明らかにされたことである。次年度は多数の施設および在宅虚弱高齢者に対するFIM、SF-36、SLQバージョンアップ版による調査の実施によって虚弱高齢者のQOL測定方法・基準を検討する。
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