平成12年度は、秋田県鷹巣町と大分県蒲江町を中心に調査を行った。鷹巣町では福祉活動の実現に向けて社会教育にどんな課題があるか実態を把握した。蒲江町では集落レベルの互助・福祉活動の実際を調査者自身も若干の体験的参加を試みながら参与観察して把握した。以上から、前年度の研究より受け継いだ「良質な互助・福祉活動」が実践されるための条件として、次の点が指摘できるのではないかと気付いたところである。 1、リーダーに優れた理念・対策・実施案などがある場合、それらが住民一般に理解・受容されるには、社会教育による住民相互の啓発活動が大きな意味を持つ。 2、社会教育場面における住民相互の啓発活動においては、啓発内容の正当性や妥当性と並んで、啓発活動に関わる関係者の人格的要因が大きな意味を持つ。 3、この視点から集落レベルの互助・福祉活動を観察すると、関係者の日常的な交流の広さや親密さなどが活動の理解・受容の度合に大きく影響しており、(1)住民相互の日常的交流と相互理解、(2)行政職者・専門職者と住民一般との日常的交流と相互理解の2つのチャンネルが同時に正機能を果たすことが重要である。 4、このうち、(1)は当該地域や集落の社会構造に基礎づけられており、一朝一夕の改善は困難であるが、(2)はキーパーソンとしての関係者の役割認識に負っている。 以上から「キーパーソンの役割」について得た知見は、1)直接的な互助・福祉活動における自己役割・使命の自覚が大切なこと、2)間接的には住民相互間によりよい対人関係・社会関係を作り上げる役割の認識・自覚・実践、の2つである。最後に、蒲江町の離島集落で「ふれあいサロン」に参加したある高齢女性が、笑顔が表れ前よりシャンと歩くようになったと仲間から励まされていた光景に出会ったことをつけ加えておきたい。
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