現在、沖縄の開発・発展のあり方については基地問題とも絡んで大きな議論を呼んでいる。このなかで主流を占めるものが、いかに所得をあげていくか、日本本土並みにするかという経済至上主義的な考え方である。沖縄は、一方では、経済的な尺度では計れない「自然の豊かさ」を持ちながら、それを経済的な尺度に換算するためにリゾート、観光開発などを進め、環境問題を発生させてきた。そのような現状を踏まえ、本研究では、研究代表者の鈴木がこれまで研究してきた第三世界、特にアジアにおけるオルターナティブな開発・発展(もう一つの開発・発展)の視点をベースに、今後の沖縄のサステイナブルな開発・発展のあり方を考えるものである。 以上のような問題意識をもとに、鈴木、多田、学生らにより、沖縄県北谷町ならびに読谷村において調査が実施され、以下のようなレポートが作成された。 1.地域社会と参加、2.新・旧地域における住民の地域愛着度と満足度、3.コミュニティと強制力、4.「基地」が内包する力と住民・行政の認識、5.「観光地」沖縄に住む人々、6.沖縄における観光のジレンマ、7.北谷・読谷におけるイメージづくり、8.北谷/読谷の内発的発展とその担い手について、9.内発的発展の担い手としての女性の可能性、10.環境と開発、持続可能性について、11.自地域の魅力と発展の持続性、12.住民の考える地域の文化と発展 以上の成果より、本研究では、いずれの調査地でも、住民たちは、自治体が主導で進めてきた地域のイメージを、ある程度は肯定的に受け入れ、町・村のシンボルとしながらも、少なからずそのようなまちづくり・むらづくりの方向性に、違和感をもってもいること、また、両町村が抱える広大な米軍基地の問題をかんがみるとき、沖縄の「サステイナブルな開発・発展」の現状と方向性は、必ずしも明るいものとは言えないことが明らかにされている。
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