研究課題
基盤研究(C)
本研究は、「転換期」に直面しているかに見える日本農業、とくに稲作を中心に、それに対する農民の対応の姿勢を探ろうとするものである。調査対象地は、山形県、沖縄県、北海道のそれぞれ若干の地域に設定されたが、そのうち本報告書は、以下の3章からなる。(1)典型的な稲作地帯である山形県酒田市では、担当者らがこれまでおこなってきた「営農志向調査」と比較検討するために、ほぼ同じ方法で各集落の生産組合長を対象に、集落営農と営農志向についての調査をおこなった。今回の調査で明らかになった基本動向は、企業的大経営を目指すことなく、家族労働力の一部を農外就労にふりむけながら、有志の小規模な共同によって稲作を維持しつつ、一部の農家では稲作以外の作目にプラス・アルファーの現金収入の道を求める、という方向であった。(2)沖縄県石垣島を調査対象地に加えたのは、「米過剰」といわれる日本において、沖縄県が今日なお米不足の移入県であるなかで、石垣島が貴重な稲作地域だからである。そこにおいては、「ひとめぼれ」など商品化に有利な品種を導入して「本土」への輸出をねらうという、特徴的な志向性が示されていた。(3)輸入自由化を迫られている今日の日本農業において重要な論点になっているのは、規模拡大か家族経営かという問題であるが、この問題との関連でわれわれは、規模拡大の道を突き進んで、日本の農業経営では珍しい大規模経営を実現している北海道の酪農地帯におもむき、その中でなお家族労働力による経営の道を最善としている酪農家の面接調査をおこなった。かれらの対応の姿勢のなかに、家族経営の論理を探ってみようとしたのである。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)