本研究は、平塚市横内団地という具体的な場におけるコミュニティ形成に参加し、(1)同地区におけるコミュニティ形成の可能性を協力者や当事者とともに探る中で、(2)日本社会における地域社会のオペレーター形成のための先行条件と、(3)それにふさわしい参加的調査研究の方法を、イタリアの社会学者たちの調査研究活動と比較・交流しつつ明らかにする。平塚市A団地は、田園地帯の一角に昭和40年代に形成された団地であり、1998年9月現在で、1310世帯、3291人の住民の内、155世帯、503人の外国人住民が居住している。国籍は、カンボジア、ラオス、ベトナム、中国、ブラジル、ペルー、韓国など多岐にわたっている。団地近隣の旧住民との関係、団地内での日本人住民と外国人住民との関係、また外国人住民同士の関係、世代や性別、日本語の識字の度合いによる違いなど、同団地の内部には、多文化・多言語、ことなる異文化接触体験をもった人々による混成社会が存在している。同団地の居住や子供の教育、仕事にともなう諸問題に取り組む自治体レベルや民間レベルの諸団体、ヴォランティアグループ、NGO、民生委員、自治会役員、小中学校教員、当事者たちの間には、多方向的な緊張関係が存在している。このような場におけるコミュニティ形成の可能性を今日考えることは、これまでの都市社会研究の主要な研究課題であった<都市への流入者と旧住民との間の接触・衝突によるあらたなコミュニティ形成>に根本的な革新をもたらすはずである。本研究の遂行のために、研究プロジェクトのメンバー、在住外国人支援委員会の委員、団地住民がそれぞれリフレクションする場として日本語教室を団地の集会所に設定し、年間延べ70回にわたる教室の開催とミーティングをおこなってきた。その活動の中での参加的調査研究の成果として、設立をめぐる相互関係、日本語教授を通じてなされる相互対立・相互承認そのものについて記録し、検討材料を一年間にわたって蓄積した(これはAlberto MELUCClが錬磨してきた反省的調査研究(ricerca riflessiva)の方法にあたる)。次年度はさらにこの活動を継続しつつ、成果を分析しとりまとめる予定である。
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