本研究は、高度経済成長期を通じて大量に創出された出稼ぎ労働者、とりわけ北海道に多い専業出稼ぎ労働者をとりまく労働市場の構造、および出稼ぎ労働力の技能形成(熟練形成)の問題を明らかにすることを目的にしている。平成12年度は、出稼ぎ労働の時系列的な変化を明らかにするための資料収集作業を進めてきた。渡島・檜山をはじめとする道内外の関係自治体で現地調査と資料収集を行った。その一方で前年度に引き続き、出稼ぎ者を受け入れている事業所(以前の調査で出稼ぎ者を多く受け入れていることがわかっている企業)を訪ね、長引く景気低迷の中で出稼ぎ労働力に対する企業側の対応の実態について聞き取り調査を実施した。そして、今年度は出稼ぎ労働者、季節労働者が全道の中で相対的に多い北海道南部の上ノ国町、乙部町、奥尻町で出稼ぎに関する本格的アンケート調査を実施した。これは出稼ぎ労働力の供給地としての檜山を過去に調査したデータと比較検討するいわば定点観測にあたる。他方で全道レベルでも過去のデータと比較する必要から北海道季節労働者組合及び全日本建設交運一般労働組合北海道本部の協力を得て、大規模なアンケート調査を実施した。これは北海道季節労働組合が1981年、1984年に北海道季節労働白書で明らかにした労働状況と今日のそれとを比較検討することで、20年間の変化を明らかにしたいと考えたからである。そして国の積極的労働力政策の一環で行われた雇用保険制度とのからみで、今日の雇用問題の課題を明らかにするべく研究を行ってきた。
|