この調査報告書は、高度経済成長期を通じて大量に創出された出稼ぎ労働者、とりわけ北海道に多い専業出稼ぎ労働者をとりまく状況の変化を時系列的に調べたものである。 出稼ぎ労働市場の構造がどのように変わったのかを知るために、出稼ぎ者を送り出す北海道檜山支庁管内上ノ国、乙部両町の出稼ぎ者を対象に(1)出稼ぎ労働者数の推移、(2)出稼ぎ者の就労地域、(3)年齢構成と最初に就いた仕事、(4)作業内容、(5)出稼ぎ経験年数、(6)労働市場の範囲、(7)作業上の地位、(8)労働期間、(9)出稼ぎの年間所得、(10)就労先と入職の状況等の指標をつかって調べてみた。次に出稼ぎ労働者の技能を調べるためにどのような技能資格を保有しているか調べ、20年前の調査と比較した。さらに出稼ぎ労働者自身が技能資格の有効性に対して感じている評価、そして希望する技能講習の内容に関してその要望を調査した。最後に、出稼ぎ労働・季節労働そのものを継続する意志の有無と老後の生活との関連を調べた。その結果明らかになったのは以下のような点である。 1.北海道の出稼ぎ労働者数は、最盛期(昭和47年)の2割程度まで減少した。 2.季節労働者に占める出稼ぎ労働者の比率は年々低下している。 3.出稼ぎ労働者の就労地は首都圏を中心に5割を超えているが、年々居住地に近い場所へ変わってきている。バブル経済崩壊後の需要の低迷も影響している。 4.出稼ぎ労働者の高齢化が進み長引く景気低迷の中で就業農会が大きく減少している。 5.出稼ぎ労働者は季節労働者に比べて保有する技能資格は多い。 6.技能資格が就業にとって必要条件となっているが、十分条件とは言い難い。 7.出稼ぎ労働者は今の仕事を通年ですることを望んでいる。 8.出稼ぎ労働者は古里を離れ都市部に住むことは望んでいない。 以上の観点を踏まえ出稼ぎ労働者に対する諸施策が検討される必要がある。
|