研究概要 |
ヤンゴン市内の新居住地区の貧困地区である南オカラッパ・シンガンキュン地区は児童労働者比率は高く,初等学校の中退率も高い。児童労働の発生を抑制し,初等学校の中退者の再入学の受け皿となつているNon-Formal Educationの施設として寺院学校がある。本研究では上記の地区のマハ・タイクバン寺院に在籍する小学部の生徒のうち,中退者が多い小学3年生の34人と小学4年生の17人の保護者,特に両親に対して家庭の経済状況と児童の就労および教育に関してアンケート調査を実施した。その結果,(1)寺院学校へ通学させる理由の質問に対して,「ノートや鉛筆などの費用がかかるため」が最も多く,次いで「親の低収入」が多い。(2)父親,母親ともに教育歴は他のアジア途上国のスラム地区と比べて高い。(3)月額平均世帯収入が4,000チヤット前後が家族での児童労働を発生させる目安となることが明らかにされた。(4)家庭内の家事労働の男女差(男子児童と女子児童の差)は小さい。(5)父親,母親ともに路上販売業の職業が多い。(6)児童に関する家庭外での賃労働従事に関する回答は皆無であった。これは調査に関して,当局の間接的介入が存在したと考えられる。(7)Non-Formal Educationとしての寺院学校の役割は大きく,児童労働の発生を抑制いていることに貢献している。等々が明らかにされた。 まとめとして,今回の調査で「親の低収入が児童労働の発生とむすびつき,そして,それが児童の教育機会を小さくする」という従来のアジア型児童労働発生モデルとは異なった事家がみられた。
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