本研究の目的は、首都圏の東北端に位置し、東京のベッドタウンとして近年急速な人口増を示しているX市、Y市およびその周辺地域に居住する多文化家族(multicultural family.本研究では、国際結婚カップルと、カップルと同居する他の構成員から成る家族を意味する。)が、どのようなライフスタイルを形成しており、また多文化家族間および地域社会の他の構成員とのネットワークにどのような意味を付与しつつ、地域的ネットワークを再生産しているかを明らかにすることにある。調査対象を、研究代表者自身もその一員である、ニューカマー韓国人女性と日本人男性カップルを中心とした家族に絞り、主要インフォーマントへの集約的な面接と参与観察によって、データを収集して、韓国人女性の生活・来住歴、家族生活への適応と不満、地域の社会生活への適応や不安、不満などの分析を行なった。 結果として、キイ・インフォーマントたちの生活史と来住歴には、個人-世代的な多様性と一定の共通性がともにみいだされた。共通性は、出身地域、「専業主婦」としての母親、両親に対する扶養責任からの相対的な自由さ、韓国での就労経験と日本への関心の連関、最終学歴、現在の家族形態(配偶者の親との非同居)などの点にみられた。また、在韓当時の日本イメージ及び日本人との接触経験と、日本への来住目的に注目して、彼女たちを類型化することもでき、このような日本イメージ、来住目的と、「生活上の難点」として示された日本社会へのコミットメント、ないしスタンスとのあいだに、関連性がみいだされた。
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