研究概要 |
1)野田北部まちづくり協議会は,神戸市のコンパクト・タウン構想の事業モデル地区として,持続的まちづくりの方向と方法を,行政との協議のなかで模索している。最終的には自律的地域経営の可能性が問題となるが,それをささえる行政の側の制度的フレームも,またまち協側(地域住民の側)にも,事業展開しながら経済的な循環の回路を形成する起動条件も欠如している。現在の日本社会のNPO組織の抱える問題である。 2)松本地区まちづくり協議会についてをすでにCDC神戸をたちあげていたにもかかわらず,それが,地域住民への「まちづくり」へのコミットメントを有効にひき出す起動因になっていない。 3)この上記二つの地区のまち協は,復興区画整理事業における先駆的なまち協であり,地域であった。しかも,野田北部は,住民の同意形式をベースとして、その上で,権利上の合意調達をはかり,松本地区は逆のベクトルをもっていて,対称的であったが,同じ問題に逢着している。本研究は,モノグラフ作成のなかで,事業プロセスの各段階における住民一人一人の小さな決定-判断,情報のあり方を重視しているが,そうした個人の意志決定の重要さをつくり出したのは,行政の復興フレームに他ならない。ここに,日本のまちづくりの可能性は,協同的公共圏と契約的公共圏の関係のつくり方にかかっていると判断する根拠がある。
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