本報告は、まちづくり協議会の方式が地域の再生に役に立つことを、社会学的に分析する。主要な事例は、神戸市にある野田北部地区である。この地区は、1995年、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた。そして、地区の一部には、区画整理事業がかけられた。その他の地区は、制度的には、任意の住宅事業しか、適用されない。そこで、その地域には、地区計画を導入する。野田北部のまちづくり協議会は、区分された両地区の住民に、同じように働きかけた。この働きかけの仕方に注目する。 両地区とも、住民が、合意形成をしなければならない。合意形成は、困難な課題である。にもかかわらず、野田北部では、順調に、合意が形成された。その要因はなにか。1)様々なイベントを創り出し、地域の公園、路地で、実施した。この活動は、住民が創案したものである。これを、「プログラム実践」とよぶ。住民が、公園・道路を、自分たちの空間と考えるようになる。この動向を、「コモンズ化」という。コモンズは、共用される場所である。2)また、コモンズ化は、住民たちの絆を強化する。こうして、合意に達する基盤ができる。この合意は、社会契約的なものではない。まさに、「ローカル・ガバナンス」である。その結果、まちづくり協議会は、行政との間で、交渉ができるほどの力を蓄積する。ここには「実践的閉域性」の境界線があらわれる。こうして、ただしく、公民協働のまちづくりが成立する。 この地区では、復興の後も、まちづくりが持続している。それは、様々な地域組織をネットワーク化し、包括的な組織をたちあげたからである。それは、地域のささいな問題も、地域全体で引き受けようとする。これを、「コミュニティ・アライアンス」という。
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