わが国はまもなく世界に例を見ない超高齢社会を迎えるとおもわれる。戦後の生産力の飛躍的な発展に支えられて、農業国から工業国へと産業・経済構造の変化を見た日本は、男性のみならず女性をも賃金労働者として、生産現場に駆り立てただけではない。新憲法の制定や民法の改正、民主教育の浸透などによって変化し始めていた人々の家族や介護などの意識のみならず、それまで要介護者を支えてきた家族形態をも変えたのである。こうした社会、経済的な変化の他方では、戦後の食糧事情の改善や衛性知識の普及に加えて、急激な医療・医学の発展は平均寿命を延ばし、少産少死を可能とし少子化に拍車をかけた。かかる事態を憂慮した政府は、この4月より「介護保険」でこれを乗り切ろうとしている。しかし無策を棚に国民の懐を当てにしたこの道は、イギリスやスゥエーデンの「二の舞い」を踏むことである。私は10年ほど前から「互恵的なボランティア制度」を、義務教育のように法制化する道を提唱してきた。たしかに阪神淡路大震災後ボランティアへの人々の関心は高まってきたが、ボランティアの理解はまだ狭い、誤った、旧態依然の「慈悲・慈善活動」の域を出ていないことである。 そこで本研究では、ボランティアの概念とその歴史を振り返って整理するとともに、人々のこの問題に対する意識を調査し、その可能性を模索することにした。具体的には、21世紀にあってもこの問題を事実上支えるであろう主役は、なおまだ女性と思われ、地域婦人会および小学校の先生の協力を得て1800名を対象に全国的な調査を実施した。そしてその一方で、福祉先進国といわれるイギリスなどヨーロッパの実態を現地に探るとともに、ボランティア活動が盛んなアメリカの実態を調査して、日本の結果と比較すべくその準備をした。現在日本での調査結果の集計は終わり、これからその分析・整理とすすみ、学会などでの中間報告を予定している。
|