戦後の生産力の飛躍的な発展に支えられて、農業国から工業、経済大国になった日本は、新憲法の制定や民法の改正、民主教育の浸透などによって、家族形態をとともに人々の家族や介護などへの意識をも大きく変えたのである。こうした社会、経済的な変化の他方で、戦後の食糧事情の改善や衛生知識の普及に加えて、急激な医療・医学の発展は平均寿命を延ばし、少産少死を可能として少子化に拍車をかけ介護等の問題を危うくしたのであった。かかる事態を憂慮した政府は、「介護保険」でこれを乗り切ろうとしているが、国民の懐を当てにしたこの道は必ずや西欧諸国の「二の舞い」を踏む。私は10年以上も前から、その具体的な対処策として「互恵的なボランテア制度」を提唱し、義務教育のように法制化する必要性を訴えてきた。たしかに阪神淡路大震災後、ボランティアへの人々の関心は高まってきた。しかしなお人々の理解は狭い、誤った、旧態依然の「慈悲・慈善活動」の域を出ていない。 そこで本研究では、ボランティアの概念とその歴史を文献を振り返って整理する一方、この問題に対する意識を調査し、その可能性を摸索することにしたのである。具体的には、(1)21世紀にあってもこの問題を事実上支えるであろう主役は、やはり女性と若い世代と考え、これらを対象に全国的な調査を実施した。そしてその他方で、(2)福祉先進国といわれるイギリスなどヨーロッパの実態を現地に探るとともに、(3)ボランティア活動が盛んなアメリカの実態と、わが国とは異なる体制をとる中国で実態調査を実施して、日本の結果と比較することにした。現在はこれらの集計およびその分析・整理を概ね終えて、報告書を作成しているところである。そしてこの三年間に渡るそれらの成果を、できれば出版助成金をうけて詳細に「書籍」の形に纏め上げ、研究者の研究に寄与したいと思っている。
|