高度産業化社会・高度消費社会を実現した日本社会では、ライフスタイルの選択度合が増す一方、人々の未来観・将来観、生活設計のイメージは飽和状態にあると位置づけられる。本研究は、そのような背景をふまえ、戦後の日本社会における人々の未来観や将来観、生活設計のイメージと実際のライフスタイルとの関連を時系列的・具体的に考察することを通じて、生活構想の歴史的展開と現状を解明することを目的とした。 2年間の研究のうち、平成12年度は、同11年度に実施した生活構想に関連する歴史的諸資料の整理ならびに標準化調査の準備作業をふまえて、生活構想と社会意識に関する標準化調査の実施・解析と社会学諸理論との接合の検討をおこなった。具体的な調査研究としては、人口規模の類似する東京都足立区・世田谷区・練馬区の3区から2段無作為抽出によって40歳以上各500人合計1500人を選び、郵送による標準化調査として『中高年の生活経験と社会意識調査』を実施した。回答数579・回収率は38.6%、調査項目は基本的属性、家族構成とジェンダー意識、生活構造、階層・生活リスクとライフスタイル、ネットワークと社会参加、ライフコースへの評価と記憶、社会保障の日本社会の動向理解などである。 データ解析の主要な結果は以下の通りである。a.8割強のものが中意識をもち、7割強のものが生活上の満足を感じている。b.収入よりは自由時間、共同活動よりは個人の行動、新たな挑戦よりは周囲との適応を図るなどのライフスタイル選択がしめされたが、それらの志向はまだ拮抗している。c.政府の社会保障制度への期待度では、医療保険・年金保険・介護保険・失業保険・生活保護の順となった。d.日本社会の課題としては公平・公正な仕組みづくりがあげられるが、7割に近いものが周囲へ期待できない社会・親の影響が強い社会と評価している。
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