近年、ボランティア活動の高まりのなかでその継続的展開にとって、組織の構造化とコーディネート機能の存在が重要であるとの認識が深まり、非営利組織(NPO)論への関心がもたれてきている。組織の構造化のための原理としては(1)継続性の原理、(2)アソシエーションの原理、(3)コーディネーティングの原理、(4)社会変革の原理が考えられる。社会福祉領域において非営利組織(福祉NPO)による福祉サービス供給が注目されるてきているが、その特徴は(1)利用者を主体として位置づけること、(2)問題解決を供給者を利用者との共同により図ることにあると考えられる。本研究の課題は、福祉NPOの組織原理とその運営実態について明らかにすることである。まず先行研究のレビューによる理論的検討およびYMCAなどの事例研究を通してNPO一般に共通する組織特性を明らかにすることを試みた。その上で福祉NPOの独自性について理論的な検討を試みた。具体的な論点としては、NPOと社会サービス、社会サービスと福祉サービスとの関係における福祉サービスの独自性、NPO組織特性とその可能性などがあげられる。(1)福祉領域におけるNPOが「福祉NPO」という独自な存在として概念上の位置づけを確保しうるものなのか、(2)「福祉NPO」が新しい福祉供給システム、さらには「新しい社会システム」を形成する可能性をもった独自の主体として位置づきうるのか、(3)福祉サービスの利用者が「福祉NPO」あるいは「新しい社会システム」の形成主体としてどのように位置づけられるのかが、今後の検討課題となる。
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