本研究では、福祉サービス供給組織としてのNPOにその焦点を絞り、開放的な組織化原則と当事者性を有し、福祉サービス供給に関わるNPOを福祉NPOと呼ぶこととし、その実態を把握するための調査を実施した。調査結果では、組織規模は比較的小規模の組織が多い。運営の意思決定への参加は、意見は十分に反映されているが約4割、他方で会員参加をあまり積極的に試みてないものが1割強みられた。サービス提供者や事務局から理事を選出している団体が多く、利用者からの理事がいるのは1割弱にすぎなかった。資金調達は事業収入を重視している。団体が抱えている深刻な課題は、活動資金不足の問題が4割強、提供者の不足3割強などである。団体が活動を開始したことで、地域の関心を喚起することができたとするもの4割で、団体を立ち上げるきっかけは、社会的に役に立つ活動をしていきたいと思ったからが約4割で最も多い。ミッションとの関わりをみると、福祉NPOの定款では「誰もが安心して暮らせる地域社会づくり」が最も多い。また採算を度外視してでも利用者の課題解決に取り組む姿勢がみられ、そこに「信頼」を育む福祉NPOの特質を確認した。公共性の高い生活問題を解決するための福祉NPOが地域において自立的に活動できる要支援するためにも自治体による何らかの資金面での支援が不可欠となる。福祉NPO活動は、利他的であり、共同的な活動であり、福祉国家体制による福祉サービスをも担いながらも、その活動目的は誰もが安心して生活できる地域づくり、福祉コミュニティの形成であり、福祉国家体制を超えて福祉社会を創造していく主体と位置づけられる。
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