研究概要 |
本研究の目的は、(1)「都市」と野宿労働者との関係性を明らかにすること、(2)その野宿労働者の空間関係(生産・消費・政治)から山谷の「社会空間」分析を試みるものである。研究初年度の成果としては,まず,本研究の対象地域,山谷で活動する諸団体(ボランティア・支援団体など)と連携をとりながら、調査協力関係の構築にむけての会議、具体的な調査として「野宿者アンケート調査」(12月―1月、8月)を実施(量的なデータの収集)、また日常的な支援場面に参加してきた(質的データの収集)。具体的な内容としては、東京・隅田川沿いの野宿層の実態把握と、ボランティア団体の共同リビング活動(野宿者自立支援事業など)での参与観察を通して、以下の知見を得られた。1、都市空間のフォーマルな「生産と消費」の関係からはみ出たような野宿者をめぐるインフォーマルセクターの実態把握(「都市雑業」とセルフサポートシステムの構築)。2、野宿者の「生活戦略」(福祉行政・ボランティアネットワークをめぐる問題)。3、野宿者をめぐる権力分析(労働市場・福祉市場の変化)。 今後の研究課題としては、さらに対象地域での調査データの分析と参与観察を通して、上記の内容を深化していくことと、よりマクロな分析枠組みとして、「労働市場」の構造的な変化とそれにともなう山谷の空間編成の問題(ビジネスホテルの生存戦略、ボランティア団体、地元町内会などの対抗戦略)を射程におさめた山谷の「社会空間」分析をおこなう予定である。
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