本研究で取り上げる「社会空間」とは、都市・地域社会を特定の地理的属性や空間概念で捉えるものではない。ポスト・フォーディズム以降の都市空間内部に生成される社会的な営み(公的領域/私的領域)が分節化するなかで浮上する社会的な葛藤が個々の行為主体の空間的な"葛藤"へ変換される過程、あるいはその個々の行為主体の"抵抗"が「都市」を多元的・多層的に創出する過程、その動的な過程そのものが決定する「影響場としての空間」をしめす。本研究ではそのような「社会空間」分析の射程から都市の野宿者を対象とした実証的な研究をおこなった。そこで、具体的な調査研究として、山谷周辺の女性野宿者を対象とした事例研究・調査および山谷周辺に設立された女性野宿者のグループホームでの参与観察をおこなった。これら、一連の調査研究をとおして、「都市」の労働/消費/所有をめぐる「ジェンダー化された空間」の切断面に位置する女性野宿者をめぐる重層的な権力関係や空間的な配置(「労働力の女性化」「貧困の女性化」など)に対抗する女性野宿者の"小さな戦い"への応答をめざした。具体的な研究実績としては、学会発表として、「都市/野宿/ジェンダー-女性野宿者の<小さな戦い>について-」(第74回日本社会学会大会・一般研究報告(3)、2001年11月25日・一橋大学)をおこなった。また、本研究をまとめる報告書の作成にあたっては、第1部で、「社会空間」分析の射程について論じ、第II部では、山谷周辺の女性野宿者を対象とした調査内容、調査結果の分析と山谷地域に設立されたグループホームでのヒアリング調査、参与観察の整理をおこなっている。
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