(1)トンネル掘削工事に従事してきた退職出稼ぎ請負労働者のケースの解明 大分県南海部郡蒲江町において、「退職建設労働者の人生と健康福祉に関するアンケート調査」を実施した(2001年1月)。この調査は、じん肺病等の認定を受けている当地の「職業病友の会」正会員を対象に、今ではかなりの高齢に達している退職者たちの療養および福祉介護状況の現況と意識、およびこれまでの職業人生の軌跡に対する自己評価や今後の医療福祉への要望、家族など近親者の将来への配慮などについて明らかにすることを目的としている。 (2)保線工事に従事してきた下請け労働者のケースの解明 保線作業の下請け構造と労働災害・職業病の発生との関連メカニズムの解明をめざしたが、たまたま本年は当時の親労組である国鉄労組の運動転換期に当たったため、裏付け資料を得ることができなかった。それに代わり、国会図書館で保線労働者に関する文献資料を探索することができた。 (3)建設日稼ぎ労働者および野宿者のケースの解明 「全国地域・寄せ場交流会」に参加し、主として野宿者の生活保護と医療の実際、および公園からの強制排除問題に関する運動論的立場からのアプローチに接し、野宿者の健康福祉問題に直接関わる生々しい行政との緊張関係状況について理解を深めることができた。 (4)斎場および屠場における被差別職業従事者のケースの解明 斎場業務については、この業務に対する「穢れ」という深刻な差別問題の背景を成す、死生観や葬制の領域にまで踏み込んで文献を渉猟し、理論的な考察を深めた。この問題は、屠場労働と共に、被差別部落問題とも連動する。 屠場労働については、前回受けた科学研究費補助金の研究テーマからの連続であるが、奈良県や三重県など近畿圏において健康福祉の観点からこの分野に再接近する糸口を得ることができた。
|