高度成長終焉以降のわが国における出稼ぎ労働の量的・質的変容は、労働力需給地の局地化や就労者の高齢化などの構造的特徴を有して推移してきた。その変容のなかみを出稼ぎ需給に関わる社会的・経済的諸条件等との関連から解明しようとする本調査研究では、平成11年度、かつて日本有数の出稼ぎ供給県であり、とりわけ最近の出稼ぎ就労者数の減少が著しい秋田県を焦点として、県内数地点と需要地の一角である中京地区において、関係諸機関や個人からヒアリング調査ならびに資料収集を行ってきた。今年度の調査研究によって得られた出稼ぎ供給減少の原因に関する知見として、まず第一に、供給サイドにおける企業誘致などの地元企業勤めの浸透と農業離れ(兼業化)の同時進行は、確かに出稼ぎの必要性を阻むひとつの直接的な原因であるものの、その背景には戦後世代が築いた生活の物質的なゆとりの広がりや、交通体系の進展ならびに車社会の浸透などによる生活スタイルの変化があるように思われる。また第二に、それとは一見矛盾するようであるが、一部にはこのような基盤を背景に、従来の出稼ぎの範疇に当てはまらないタイプの一時的・移動的就労形態が出現している。さらに第三に、需要サイドでは、出稼ぎ就労業種の主流である建設業界において、従来のグループによる就労が依然としてみられるものの、経営の効率化や建設機械のハイテク化、そして就労者の高齢化を根拠とした企業による就労者「選抜」(買い手化)が進行していて、この分野でも年齢や技能等の条件がその有効な手段として用いられるようになっている。 次年度は、このような全体における変化に対して、主体の側が出稼ぎをどのように生活の中に位置づけたかについて追究し、本調査研究のとりまとめにかかりたい。
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