最終年度にあたる平成12年度は、昨年度の調査研究過程の中で浮かび上がってきた課題に力点をおいて現地調査と資料収集をすすめるとともに、収集された資料やデータに基づいて学内紀要等に論文投稿を行ってきた。 その調査研究課題のひとつは、前年度の知見にかかわる出稼ぎ需要の変化の問題である。出稼ぎ者の受け入れが多い建設産業では公共投資の縮減によって90年代後半より出稼ぎ需要が低下している。しかしながら、ヒアリング調査を行った中小の建設事業所の事例では、このような潮流がイコール出稼ぎ需要の解消にはつながっていなかった。むしろそこには、雇用形態の多様化がすすむ今日でも、受注の集中する年度後半の(つまり短期的で一時的な)人手の確保が必要とされる時期に、出稼ぎ就労者との既存のつながりやその実績を保持しようとする事業所の経営戦略が見受けられた。反面、秋田県出身の就労者が総体として高齢化していることを理由に、採用の対象・方法を切り替える事業所があることも確認された。相異なるこれら両者の実態は、出稼ぎ需要の今日的変化がかなりの程度で供給側の社会経済構造の変化に関わっていることを推察させる。 もうひとつは、秋田県出身の就労者が総体的に高齢化しているとされる点を、県の就業構造の変化との関連で分析することであった。この作業を出稼ぎ就労者個人や関係機関などにおけるヒアリング調査の成果と接合しながらすすめた結果、出稼ぎ供給の急減と就労者の高齢化は90年代以降に出稼ぎを継続・引退している人たちの集合的特性(担い手の中心が昭和ひとけた世代の農業従事者である点など)として構造的に進展していることが析出された。秋田県における今日の出稼ぎ供給がすべて以上のような範疇におさまるわけではないものの、近年の大きな潮流の背後には世代を超えた家族的農業経営をめぐる問題や県内雇用の確保に力を入れる雇用政策の流れが看取される。
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