平成11年から同14年の本研究における実績の概要は次のようである。 1.岡山孤児院の創立から解散までの約40年間の運営体制の構造と内容を論文にまとめ、その全体像をほぼ解明した。また、それらの論文を1冊に合本し、科学研究費用の研究成果報告書を作成した。 2.岡山孤児院の基礎研究の1つとして、創立者の石井十次が残した『日誌』27冊より人物別索引を作成し、石井の交友関係や同院に関わった職員と関係者などの状況を把握する基礎資料を作成した。 3.同院の職員であった末藤新市の現存する『日誌』7冊のうち古い順に4冊を解読、活字化し、明治中期から大正にかけて働いた慈善(社会)事業施設職員の意識や活動の実態を事例的に解明する基礎資料を作成した。 4.『岡山孤児院新報』より地方委員と賛助金の資料を抽出し、地方委員の全国的な分布状況や賛助金(員)募集に関わる資料をまとめた。 5.岡山孤児院の家庭舎の建物が岡山市内に現存していたので、その建物の実測調査を実施し図面などを作成し家庭舎の建物が専門的建築であり、かつ今日の小舎制の建物のルーツであることなどを確認した。 6.毎年(4回)8月下旬から2週間ほど他の研究者と共同で、岡山孤児院の資料が多数現存する宮崎県の「石井十次資料館」(石井記念友愛社内)で資料整理を行い、簿冊文書の全てを目録化し、書簡類の整理を続けているところである。 7.岡山孤児院史研究との比較研究のため、明治期に設立された仙台基督教育児院の資料調査も並行して行い、将来の比較研究に備えている。
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