平成12年度は、病院組織の中で、進行する出産の医療化に疑問をもつ勤務助産婦、助産婦教育現場にある教育者、助産婦職能団体が行っている研修等の取り組み、そして開業助産婦への聞き取りを中心に調査を進めていくことを目的とした。他方、本年度は他の研究助成により、ブラジルにおける出産のヒューマニゼイションに関する国際会議への参加も果たすことができ、高い帝王切開率がブラジルで(そして世界各国で)なぜ広がっているのか、またそれに対する取り組みを視察し、意見交換することができた。しかしながら、介護という家族の事情を抱え、予定通りの調査研究を進め、その結果を整理・分析するまでに至っていない。この遅れについては平成13年度で調整したいと考えている。 昨年後半から再燃している「助産士」問題は、もともと自民党社会部会の看護問題小委員会が1988年に「保健婦助産婦看護婦法」の改正案を議員立法として提案して以来、いくたびか議論されているが、この議論も男女共同参画社会の実現という理念と出産と助産の現実との接点にあり、違った角度から問題提起をしている点で、最終年度では本研究に組み込んでいこうと考えている。 本年度の研究の成果の一つとして、『助産之栞』(1896-1944:近代助産婦教育では重要な働きを担った緒方助産婦教育所と会報兼通信教育テキスト)をもとに、助産婦職の近代から現代への変遷をまとめた。助産婦という職能に対する医師の期待という面での、近代100年間の連続性にも気づくことができた。 以上の研究成果を踏まえ、平成13年度は遅れている資料の整理と分析、文献資料研究を中心に最終的なまとめ作業に向かう予定である。
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