本研究では、初年度において全国の小学校の言語障害通級指導教室で教育支援を受けている学習障害およびその疑いのある児(以下、LD児)の実態を調査し、2年度において一部の地域でLD児の追跡調査を行い(調査及び事例研究)、最終年度において通級指導教室と連携する通常学級担任のためのLD児学習支援マニュアルを作成し、併せて仙台市の小学校でその使用評価を行った。 本研究により明らかとなったのは以下の諸点である。 1) 通級による指導の大半を占める言語障害通級指導教室において、教育支援を受けているLD児は全対象児の6.8%(1教室あたり)1.7名)に過ぎず、週当たりの指導時間は1.6時間であった。 2) LD児への指導内容は認知・学習面の支援より動機づけや自尊心を高めることに重点が置かれていた。 3) 言語障害通級指導教室におけるLD児は、主として、文字言語処理、音声言語処理、場所や時間のオリエンテーション、および社会的スキルの困難を持つ4群に分類された。 4)LD児の教育支援を行う際に、通級指導教室担当と通常学級担任の連携のほか、特殊学級担任の参加やチーム・ティーチング導入が重要であることが示された。 5) LD児を追跡調査すると、通級による指導にもかかわらず学業面で改善が見られた事例は少なく、この障害のもつ難しさが改めて示された。 6) LDに関する専門知識や指導経験の少ない通常学級担任のためのLD児学習支援マニュアルを作成し、仙台市のすべての公立小学校に配布して事後調査を行ったところ、同マニュアルの有用性に関して高い評価を得た。同時に、現場の教師のニーズを把握することが出来た。
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