昨年度有効性を検討した教師に対する研修セミナーを発展させ、今年度は、教師による事例検討会を実施し、その有効性を検討した。事例検討会は1学期に1回開催し、毎回、3例前後の事例検討を行った。150名前後の教師が参加したが、ほとんどの教師が事例検討会形式を高く評価していた。同時に、通常学級にいる高機能広汎性発達障害児の実態を調査した。対象は、セミナー参加の教師である。通常学級にいる高機能広汎性発達障害児と思われる生徒の約半数は、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群など、ほぼ正しい診断をすでに受けていた。一方、学習障害として、異なる診断名を受けている生徒も少数見られた。問題点は、ある年代によく認められるものと、年代を共通してみられるものに分けられた。前者では、小学生年代では「友人と遊べない」が、中学・高校生年代では「会話の噛みあわなさ」があげられた。共通する問題は、「友人からの孤立」、「集団行動困難」「こだわりに基づくトラブル」などであった。そうした問題行動に対して有効な働きかけは、『本人の特性を認めながら個別に対応する』というものであった。一方、有効でなかった働きかけとして、『注意・叱責に留まる対応や本人への直接的働きかけをせずに一般的な注意を与える』ということがあげられた。さらに、高機能自閉症児を対象としたグループ指導で対応する上での留意点を検討した。その結果、訓練・指導の構造的側面として、活動ごとに場所を変える、視覚的手がかりを豊富に用いる、見通しを立てられるよう時間の流れをあらかじめ示す、などが有効と思われた。また、こだわり・パニックへの対応としては、本人の気持ちを共感的に受け止める、本人が納得できるキーワードを探し使用する、タイムアウトとして他の場面に連れ出す、事前にやることの確認ときちんとやること約束をしそのことを途中で何度も確認する、などの対応が有効であった。2年間の研究により、事例検討会形式の研修会が有効であることと、高機能広汎性発達障害児への有効な対応方法の一部を明らかにできた。
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