本研究では、「大学における介護等体験の効果的な事前・事後指導とはどうあるべきか」について検討・提案することを目的として調査を行っており、一般大学生の障害や福祉に関する知識や理解の程度について明らかにする調査(研究I)、事前・事後指導に関する体験学生および体験先(特殊教育諸学校及び社会福祉施設)のニーズを問う調査(研究II・III)、大学における事前・事後指導実施の実態を明らかにする調査(研究IV)の4つの調査から成っている。 調査の結果から、大学生は一般的に障害や福祉に関する知識や理解が乏しく、それゆえに大学における事前・事後指導の実施の必要性は高く、体験先からも強く求められていることが明らかになった。また、指導上の留意点として事前指導では障害や知識に関する概括的・一般的な事柄についてふれるとともに、体験の趣旨の理解の徹底を図ることや体験内容に関する具体的なイメージを事前にもてるような内容および指導方法の配慮が重要であることも確認された。一方、事後指導については体験内容や体験で学んだことを学生同士で発表し合ったり、「体験をどのように教職に生かすか」といった体験の意義について具体的に考える機会を設けることが、体験の趣旨である「個人の尊厳や社会連帯の認識」を一層深める上で重要であるという考察が得られた。しかしながら事後指導を実施している大学は非常に少なく、現段階では事後指導の重要性に関する認識そのものが高まらなければならないという事実も明らかになった。 本研究では、調査から明らかになった事前・事後指導に関する関係者のニーズを基に、大学における効果的な事前・事後指導の内容や方法について提案し、一部の大学における具体的な事例も示している。
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