研究概要 |
1.平成10年度の研究においては、公立中学校の3年生の教室を対象に、単元「二次方程式」の開始から終了までの約1ヶ月間にわたってフィールドワークを行った。本年度は、このクラスの生徒のうち、記録・分析において焦点事例とした11名に対して、授業終了後約10ヶ月経過した時点でのインタビューを行った。その結果、(1)生徒は、学校での「探求の文化」と塾での「受験文化」の間にコンフリクトを感じながら学習を行っていたこと、(2)その中で、数学という対象世界の二重化を行っていること、(3)「探求の文化」は、知識面よりむしろ、数学の好き嫌いや数学学習間に対して影響を与えていること、が明らかになった。 2.平成11年度はあらたに、同じ公立中学校の2年生の教室を対象に、単元「二次方程式」の授業期間(約1ヶ月間)、授業の参与観察、生徒への質問紙調査、教師へのインタビューなどを実施した(教師は、昨年度の研究のときと同じであるが、今年度は、事情によりこの期間だけの飛びこみ授業となった)。その結果、(1)これまで数学教育において有効とされてきた≪実物→図→数式≫という意味構成の方法が必ずしも有効に機能しないこと、(2)学習の活動システムの土台部分にあたる≪教室の規範≫や、教師-生徒および生徒-生徒間の≪協同関係≫が十分形成されていないところでは、意味構成のプロセスが生成しにくいこと、が明らかになった。 1.の成果については,「研究発表」にあげた論文で発表したほか、現在、'Generating contexts for learning in a japanese classroom of diverse cultures:The dilemma of two interacting activity systems'と題する論文を"Mind,Culture,and Acitivity"誌に投稿中である。また、2.の成果については分析を継続中である。
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