本研究は、読み書きに関する基礎的能力が、日本においてどのように普及し大衆化していったのかと言うことを、17世紀から18世紀の都市に焦点をあてて解明しようとするものである。その際、都市住民の必要とした職能形成のなかに、読み書き能力がいかなる位置を占め、また役割を果たしたのかという視点から調査・研究をおこなうものである。 本年においでは、昨年につづいて、越後村上町における18世紀の寺子屋の入門帳の分析をおこない、これと、村上町の都市住民台帳との照合をおこなう予定であった。これまでの調査しでは、上における宗門人別帳などは発見されず、残念ながら、住民台帳との照合は行えていない。今後さらに調査をするとともに、寺院の過去帳などの探索をする必要がある。 越後十日町(徳永家)における労働日誌を入手したので、これの分析をおこなった。この日誌には、100名以上の人聞の労働が、1日ごとに記されており、これから、近世の人々が、具体的にどのような労働をおこなっていたかを確認することができる。きわめて貴重な資料である。地区内に、複数の宗門人別帳が存在することから、これらとの照合をおこなった。その結果、数名の子どもの存在を確認でき、近世期の子どもの労働を復元することに成功した。これらは、近世初期の都市には該当しないが、貴重な事例研究となり得るものである。 今後は、対象を近世中後期や農村部にも拡大して、労働と職能形成の資料をさらに探索する必要がある。
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